2013/05/26

ドキュメンタリー「There’s Something Wrong With Aunt Diane」 の感想

TVで「There’s Something Wrong With Aunt Diane」 というドキュメンタリー番組をみました。数年前に放送されたものの再放送のようです。

2009年7月、36歳のDiane Schulerは、NY州の一方通行の道路を逆行し、彼女自身を含む、8人が死亡する大事故を起こします。そのうち4人は彼女自身の2歳の娘と3人の姪、また、3名は衝突された車に乗っていた人たち。驚くべきことに、司法解剖の結果は彼女がアルコールとマリファナの両方について高レベルで摂取していたことを示すものでした。

子どもたちを大勢乗せた車を運転するのにそんな危険を冒すはずがない、夫はそう証言します。検査結果を受け入れられない夫は、再検査の可能性を模索します。彼はその日実際に何がDianeに起きたのか見つけることが出来るのでしょうか・・・。
 

以下はネタばれを含めた記述ですので、これから見る予定の方はどうぞ読まないで下さい。
















今回のドキュメンタリーは、家族、友人たち、捜査官、目撃者の証言で構成されています。被害者側遺族の証言も出てきますが、基本的には「加害者」側遺族の視点で作られた番組です。

事故前のDianeについて


Dianeは、幼い頃に母が離婚して出ていったという過去を持つ女性でした。

友人たちの証言から浮かび上がるのは、妻として、母として、職業人としてフルに働く模範的市民の女性。何度も何度も、Dianeは素晴らしい女性で、そんなことをするはずがない、という趣旨の証言が繰り返されます。

また、Dianeが歯科治療に通っており、事故の1年ほど前に中断してしまった事実も判明します。事故の1週間前に会った友人の証言によればDianeがあごの辺りを押さえてつらそうにしていた、という事実も。 

事故直前の状況について

事故の直前に車に乗っていたDianeの姪(当時8歳)が父親に電話をかけていました。「There’s Something Wrong With Aunt Diane」 
番組のタイトルでもあるこの台詞は、この姪が父親に電話で遺した言葉です。

また、事故直前に車を目撃したドライバーたちによれば、車がおかしな動きをしていたこと、逆走しており、寸でのところで避けたこと、などでした。

科学捜査の結果

科学捜査の結果は、Dianeの体内からは高濃度のアルコールとマリファナの同時摂取があったとうかがわせるものでした。

遺された夫はこれを受け入れることができません。アルコールは本当にこの悲劇の犯人であったのか。Dianeは、脳卒中やその他の病気に苦しんだのではないか。検査の結果は本当に正しいのか。データに取り違えはなかったか。再検査をしたいと望みますが、費用面で難しい。


しかし、番組の支援を受けてついに夫はDianeの再検査の機会を得ることに。 再検査の結果は? 彼らはその日何が起きたのか見つけることが出来るのでしょうか。


結論

結論としては、再検査の結果も初回の検査と同様、彼女が当日アルコールとマリファナを摂取していたという事実に変わりはありませんでした。

ドキュメンタリーの最後は、Dianeの夫が生き残ったただ一人の息子と歩くシーンで締めくくられています。息子さんは事故の後遺症でまだ治療中。夫はDianeの遺体を掘り起こしての再々検査を希望していますが、許可は下りていないそうです。

彼女は実はアルコール常用者だったのか? それとも、歯の痛みを紛らわせるために摂取したのか? それは今となってはわかりません。


今回のドキュメンタリーは、再検査の結果というピンポイントの情報のみならず、本人の過去から遡り人物像を描くというものでした。単に飲酒運転は危険です、ということで終わらせてはいけないでしょう。模範的だけれど心にトラウマをもった人物。人生、いつ転落するか、どこに危険が転がっているがわかりません。人の心の闇の深淵をのぞいたようで、怖いな、というのが正直な感想です。


参考記事
2009 Taconic State Parkway crash
Pursuing Answers, Two Years After a Tragic Collision
TV review: ‘There’s Something Wrong With Aunt Diane’

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