2013/05/11

オハイオ州の監禁事件  Ohio Abductions

 先日、米オハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)で女性3人が約10年にわたり監禁されていた事件が発覚しました。

なんとも恐ろしい事件です。被害者のことを思うと胸が痛みます。PTSDもあるでしょうし、回復には時間がかかるでしょう。報道番組のコメントで、ある人が、「この事件で彼女たちの身に降りかかったことと彼女たち自身は区別すべきである。彼女たち自身の価値を貶めるものではない。」と発言していました。周囲のサポート・理解が本当にクリティカルだと思いました。

被疑者は元スクールバス運転手。また、離婚した妻との間に娘がいるそうです。娘はTVの取材に応じており、もうこんな父親とは会いたくもないなどと発言していました。娘がいる父親が若い女の子にこんなひどい犯罪を行うというのは、理解しがたいです。

TVで放映された被疑者は、言葉が悪くて恐縮ですが、いかにも気持ちの悪い風体の人でした。事件が事件だけに生理的嫌悪感を抱いていますし、カメラマンも敢えてそう見えるように撮っているのかもしれませんが。

被疑者は逮捕され、3女性への強姦と、そのうち1人が出産した女児の計4人に対する監禁の罪で訴追されました。


地元の検察官は報道陣に対し「殺人罪での訴追を目指す。死刑求刑を考慮したものだ」と語ったそうです。報道番組に出ていた法律専門家のコメントによると、以下のロジックによるようです。
  • オハイオ州は死刑が実施されており、誘拐に伴う殺人には死刑 が科されうる。
  • 殺人の対象は、miscarriage (流産) させたこと。被害者を妊娠させたものの、 腹部を蹴ったり食事を与えなかったりの虐待を加え、いずれも miscarriage させており、検察官はこれを対象に、aggravated murder (加重殺人罪) として訴追する準備を進めている。
  • 法律的には可能だが、問題は事実の立証。妊娠→暴行→miscarraigeという一連の事実の証拠がない。被害者の証言しかない。ずっと監禁されており、病院なども行っていないため。 

また、このような誘拐事件ではストックホルム症候群の結果、犯人に都合の悪い証言ができなくなってしまう被害者もいるようです。立証が難しいと判断した場合は殺人罪での起訴はないかもしれませんね。


先日のボストン爆破事件もそうでしたが、アメリカでは、このような社会的影響の大きい事件については、法律的な論点も詳しく報道されるという印象です。これはおそらくアメリカでは連邦・州によって法律が異なるからだと思われます。例えば死刑制度についても、廃止した州と存置している州があります。そのため、個別の事件に応じて説明しているのでしょう。


ちなみに、今回の事件に関する報道番組を見ていて、ギョッとしたことがあります。被害者のご自宅にお花などを届けている人たちが映されていました。そのなかに、10代前半くらいと思われる女の子(後姿)が、お花か何かを置いた後、携帯電話(スマートフォン)でご自宅の写真を撮っていたのです。ここから先は憶測ですが、おそらくこの子以外にも同じように写真を撮ったりしている大人たちがいるからじゃないでしょうかね。日本でも犯罪被害者の方たちのプライバシーが問題となっていますが、こちらでも同じですね。さらし者みたいじゃないですか・・・。うーん。

また、こういう監禁誘拐被害者の方を支援する会の男性が「そっとしておいてあげるのが一番だ、マスコミは被害者たちに近寄らないように」などとコメントしていましたが、そのコメントの直後に被害者たちの家付近で報道を続けるマスコミにもちょっと矛盾を感じました・・・。

勿論、今回の事件は社会的影響が大きいので、報道の必要性が高い事件とは思うのですが、それは犯人の方にフォーカスしてもらうことにし、被害者の人たちは本人たちが語りたいというまでは、そっとしておいてあげましょうよ。

むしろ、失踪事件発生当時から現在に至るまで、兆しがあったのに結局救出できなかった捜査機関に手抜かりがなかったか否か、是非検証してほしいと思いました。 

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